今日は大学病院(臨床工学技士)から一般企業(データサイエンティスト)へ転職して、増えたものと減ったものについて紹介します。
病院は特殊な環境だと思っています。それは患者さんにとっても医療従事者にとっても。
病院で当たり前だったことは、企業では当たり前ではありません。
もし、一般企業への転職を考えている方がいたら、参考にしていただけると幸いです。
それでは見ていきましょう!
減ったもの
まずは減ったものから見ていきましょう。
1.給料
僕は未経験からデータサイエンティストとして転職しました。
独学で勉強してはいましたが、赤ちゃんも同然です。
現に入社して1週間は何もできませんでした。完全に足手まといです。
そんな人に高いお金を払う会社などどこにもありませんよね。
なので、これはある程度覚悟していたことです。
とは言え、契約の書類上は病院時代の給料と全く同じです。
なぜ「減った」の項目に入れたかですが、僕が病院に入った時期は2年前のコロナ真っ盛りの時でした。
そのため、補助金や手当がこんもりあったので(一年目から最前線に突っ込まれていた)手取り金額的には減りました。深夜の残業も多かったですし。
企業ではコロナ手当など出るわけもなく、また残業もそんなにないため金額は書面通りです。
実際にもらえるお金は減ったので、節約等々考える必要がありましたが、最初からわかっていたこともあり、理由も納得できるので精神的にはそんなに負担ではありませんでしたね。
2.職場への不満を聞く声
これは元いた病院や転職先の企業にもよりますが、僕の場合は圧倒的に職場への不満を聞かなくなりました。
病院にいた頃は他職種への不満、上司への不満、部下への不満、患者さんへの不満、それはもう多かったです。そして、言いたくなる気持ちも残念ながらわかります。
理由はいくつかあると思いますが、その中に「そう言う場所で育ってきたから」というのはあるでしょう。
懐かしい話ですが、僕が新人の頃、初めて抗凝固薬をシリンジに詰めている時に、先輩に不満をダラダラとぶつけられて少しこぼしてしまいました。そしてそのことでまたネチネチ言われるんです笑
そんな環境にいたら、悪口の一つや二つ出てくるのは当たり前かもしれません。
実際、僕も不満を言っていました。主に上司の、ですが笑
環境のせいにするのは良くないと思いますが、転職後不満を言うことはもちろん、聞くことも滅多にありません。
大事なのは「聞くこと」が減ったところです。
僕が不満を言わなくなるのは当たり前でしょう。
だって、好きでその企業に転職して、やりたいことをやらせてもらえているのです。
不満どころか楽しすぎるくらいです。
でも、聞くことが減るのは驚きました。
社員が不満を持っていないわけではありません。しかし、その不満はちゃんとした話し合いやオープンな場での提案になっているのです。(部長がそうするようにと言ってくれています)
そして、それを受け止める側も建設的な態度を示します。
例えば僕が今の仕事内容に不満を持っていたとしましょう。
「もっとこういう風にしたらいいのに」「このやり方は間違っているのでは?」
それを周りの人に言うのではなく、上司に直接言います。
すると「どうしてそう思うの?」「どういうやり方の方がいいと思う?」と返ってきます。
この時点で既に僕の不満は消えています。だってもうぶつけてしまっているから。
まだ転職して2ヶ月ですが、既にいくつかぶつけて解決してもらったこともあります。
まだ赤ちゃんの僕に時間をとってくれて、案を採用までしてくれるんです。
そりゃ、不満は蓄積されませんよね。
これは僕の職場が恵まれているからかもしれませんが、少なくとも病院では考えられないなと思ってます。
(病院時代でも教育方法でいくつか提案しましたが全部蹴落とされました。なのでもう勝手にスタートし引き返せないところで許可だけもらいました笑)
3.命へのプレッシャー
僕はこれが一番減って嬉しいものでした。医療従事者なら誰しもがこの重圧に耐えながら仕事をしていると思います。僕はこれが大嫌いでした。
だって、自分が失敗するだけで人が亡くなってしまう可能性があるんです。
いや重すぎるでしょ!
僕のいた病院は1年目の冬から1500床もある病院で1人ぼっちの夜勤が始まります。
緊急透析はもちろん、モニタや人工呼吸のトラブル、補助循環だって回さなければいけません。
VAECMOに関しては、その場で自分しかおらず、また先輩を呼ぶにしても数分が命取りです。先輩が来るまでに終わってしまいます。
どう考えても一年目が背負いきれる責任を超えてしまっています。
何回夢で出てきたことか…
僕の同期は「夜勤嬉しい」とか言ってましたが、頭おかしいんじゃないかと思ってました笑
僕の転職先は予防医療をおこなっているので、医療と関連はありますが僕のミスで人が亡くなることはありません。
情報漏洩や納品物のクオリティ等、注意することはありますが、病院時代の命を預かるプレッシャーよりは重荷になりません。(多くは多人数でチェックするし、本当にやっちゃいけないことはそもそも権限がなくて操作自体できませんから)
命を預かることに誇りを持つ気持ちはわかります。が、僕にはそれよりも「もし失敗したら」の方が強かったので、身体に合いませんでしたね。
増えたもの
次に増えたものを見ていきましょう!
1.睡眠時間
これはものすごく増えました。病院時代でも僕はかなり寝る方(22時就寝:5時半起床)でしたが、残業で0時を超えることはよくありましたし、深夜に呼び出されることもありました。
夜中に夜勤の人から電話がかかってくることも病院で働いている人なら経験したことあると思います。
それに比べて、当たり前ではありますが、企業では残業で0時はよっぽど越えないし、深夜の呼び出しも夜中に電話がかかってくることもありません。夜勤もありません。(特殊な職種による例外は除きます)
おかげで「夜に寝て、朝起きる」という当たり前の生活が送れるようになりました。
控えめに言って最高です。天国です。
寝不足で仕事をすることもなくなりました。(医療こそなくすべきだと思いますが)
やはり、人は寝なきゃダメですね!
2.勉強する時間
「いやいやいやいや、しばちゃん。病院にいる時に勉強してなかったの!?」とヤジが飛んできそうですが、ちゃんとしてましたよ笑
でも、病院という環境では医師が一番上にいます。
自分より遥かに知識を持った人が指示してくれるのです。
最初の頃に必要なのは、その指示通りに動けることでしょう。
逆に言えば「指示通り動ければ仕事は成り立つ」のです。
透析なら、その条件(血液流量、透析液流量、ダイアライザーの種類、抗凝固薬、実施時間etc…)は医師の指示のもと決められます。
透析に詳しくない医師なら注意が必要ですが、慣れている人なら大きく間違えることはありません。
それにデフォルトは決まってしまっています。
もちろん「先生、この患者さんは〇〇なので、こっちの方がいいのでは?」と提案できる方がいいに決まっています。
ただ、提案できなければ仕事が成り立たないかと言われれば、そうではありません。
医師が大きな間違いをしていないかの判断(Wcheck)と、それ通りに動けること。
それだけできれば業務は回せてしまいます。
でも、企業。特に僕の職種に関してはそうはいきませんでした。
だって、一緒に仕事をする人たちは全く違う知識を持った人たちですから。
データサイエンスについて自分がわからなければ、他の誰もわからないのです。
データサイエンスでできることを自分ができなければ、他の誰もできないのです。
よって、必然的に勉強時間は増えました。
決して医療従事者は勉強する必要がないと言っているわけではありません。
そこは勘違いしないでくださいね。
3.考える時間
僕は病院勤務は肉体労働だと思っています。
実際、頭よりも手を動かしている方が多いでしょう。
透析を行うときに気をつけることは毎回ほぼ同じです。
それよりも、プライミングする、穿刺する、条件設定する。と手を動かす方が多いと思います。
仕事中に、椅子に座って、じっくり悩んだり、調べ物してたら「仕事しろ」「サボるな」と怒られるのが病院です。
一方で企業ではそんな時間ばかりです。
コードを書く前に「どんな構造にしようか」「どんな機能を持たせようか」
会議に出る前に「どう提案しようか」「資料を見やすくするにはどうしたらいいか」などなど。
明らかに手より頭が動いてます。
これには良い面と悪い面があると思っています。
病院の仕事は1人が100人分の仕事をこなすことはできません。
でも、企業ではそれがあり得てしまいます。
病院ではとんでもなくいい治療ができることも、とんでもなく悪い治療ができることも稀です。医療の質は高水準で一定だからです。
企業ではとんでもなく悪いものも、とんでもなく良いものもよくできます。
左利きのエレンという漫画を知っているでしょうか。
その中のセリフで「ゴミからはゴミしか生まれない」というものがあります。
企業で行う仕事はゴミができやすいのです。
(ちなみに医療ではゴミみたいな仕事はできません。マニュアル化されており誰でもできる、が医療の根幹にあります)
だからこそ、脳死で手を動かすのではなく、考えて創造的な仕事をしなければいけません。
僕は個人的に考えるのが好きです。だからこの考える時間が増えたというのは嬉しいことでした。
まとめ
いかがだったでしょうか。
今回は僕の経験談となってますので、全部が全部僕と同じように増減するわけではありませんので、その辺りはご注意ください。
僕は病院での仕事も、企業での仕事も好きですが、やはり健康のことを考えると企業の方が身体に合っていますかね。
(もう夜勤とかできる気がしません笑)
働き方には向き不向きがあると思います。
せっかく1日の3分の1を仕事に充てるのですから自分に合った環境を見つけていただければと思います。
それではまた!